第22話 「小倉の五街道」の起点・常盤橋と「シュガーロード」こと長崎街道

令和2年6月、北九州市を含む3県8市の「砂糖文化を広めた長崎街道~シュガーロード~」が日本遺産に認定されました。

日本遺産とは、文化庁が認定する、地域の歴史的魅力や特色を通じて日本の文化や伝統を語るストーリーで、104のストーリー(令和2年8月現在)が日本遺産に認定されています。

今回は、日本遺産「砂糖文化を広めた長崎街道~シュガーロード~」を構成する文化財のうち常盤橋と長崎街道を紹介します。

九州咽喉の地・小倉

かつて、小倉は九州咽喉の地(きゅうしゅういんこうのち)と呼ばれていました。

耳鼻咽喉科の「咽喉」で分かるように咽喉とは「のど」のことですが、それ以外にも「重要な通路」という意味を持っています。九州各地につながる五つの街道が、小倉を起点に放射状に伸びていたことからこのように呼ばれていたようです。

門司往還:門司口と大里・門司を結ぶ街道
中津街道:中津口と豊前国中津を結ぶ街道
秋月街道:香春口から田川郡香春、筑前国秋月を経て筑後国久留米に至る街道
長崎街道:到津口から筑前国黒崎・木屋瀬を経て肥前国長崎に至る街道
唐津街道:溜池口から筑前國戸畑・若松、博多・福岡を経て肥前国唐津に至る街道

「小倉の五街道」の起点・常盤橋

この五つの街道を「小倉の五街道」と呼びます。

全ての起点となっていたのが、小倉北区の紫川にかかる常盤橋(ときわばし)。常盤橋の名前にピンとこなくても、紫川に架かっている木の橋をご存知のかたは多いのではないでしょうか。

常盤橋は、小倉藩初代藩主・細川忠興が城下町を建設する際に町人町と武家屋敷を結ぶ重要な橋として架けられたものです。

長崎街道の起点であるため、常盤橋は参勤交代の大名をはじめ多くの人に利用されていました。享保14年(1729年)に、第8代将軍・徳川吉宗に献上する白い象が渡った話もよく知られています。

ところで、常盤橋のたもとに広告塔と呼ばれるモニュメントがあるのをご存知でしょうか。

かつて小倉で過ごした作家・森鴎外は、小説「獨身」にて「常盤橋の袂に圓い(まるい)柱が立ってゐる。これに廣告(広告)を貼り付けるのである。」と書き、この広告塔を「東京にないもの」として挙げています。

ただし、現在の広告塔は平成15年に再建されたもの。オリジナルは明治23年頃に建てられており、大きさも現在の約3倍であったそうです。現在もこの広告塔にはさまざまなポスターが貼られており、まさに「広告塔」としての役割を果たしています。

また、常盤橋には、何人もの著名人が訪れています。

まず紹介したいのは伊能忠敬(いのうただたか)。

17年かけて日本各地を測量し、地図を作った人物として有名です。伊能忠敬が残した「測量日記」には、文化7年(1810年)に常盤橋を訪れたことが記されています。

また、平成13年には伊能忠敬測量200年を記念して、常盤橋のそばに「伊能忠敬測量200年記念碑」が建立されました。

ドイツ人の医師・シーボルトも常盤橋を訪れています。 文政9年(1826年)に日本を訪れた際に小倉に一泊半滞在し、常盤橋の上で何度か測量を行ったそうです。著書「日本」には常盤橋の図録が掲載されています。 常盤橋のそばには、その由来等が書かれた案内板が建てられています。近くを通った際には、ぜひ目を通してみてください。

「砂糖文化を広めた長崎街道~シュガーロード~」

この常盤橋を起点とする街道のうち、小倉と長崎をできるだけ最短距離で結ぶために整備されたのが長崎街道です。

令和2年6月に、北九州市、飯塚市、佐賀市、小城市、嬉野市、大村市、諫早市、長崎市の8市による「砂糖文化を広めた長崎街道~シュガーロード~」が日本遺産に認定されました。

長崎街道が「シュガーロード」と呼ばれるのは、当時、長崎街道沿いの地域には砂糖や外国由来の菓子が多く流入し、菓子文化が他の地域と比べて発達したことによるものです。

現在もこの地域には、砂糖を使った食品が名物として多く残っています。カステラ(長崎市)や丸ぼうろ(佐賀市)、羊羹(小城市)などの菓子に加え、砂糖をふんだんに使った大村寿司(大村市)が有名です。

「砂糖文化を広めた長崎街道~シュガーロード~」を構成する北九州市内の文化財には、常盤橋はもちろん、小菊饅頭やくろがね羊羹などの菓子、そして前回の小倉城ものがたりで紹介した広寿山福聚寺が含まれています。

現在、北九州市内で長崎街道の面影が残っているのは、宿場町としてにぎわった黒崎宿、木屋瀬の2ヶ所です。木屋瀬の「長崎街道木屋瀬宿記念館」には宿場にまつわる資料などもあり、当時の様子を詳しく知ることもできます。

さいごに

「小倉の五街道」の起点であった常盤橋、そしてそこから延びる長崎街道。ともに、小倉の歴史に密接な関係を持っています。九州各地に向かう人の多くが常盤橋を渡ったと思うと、感慨深いものがありますね。

小倉城から常盤橋までは歩いて5分程度です。ぜひ訪ねてみてください。

参考文献:北九州市立自然史歴史博物館「小倉城と城下町」海鳥社、2020年/北九州市ホームページ
文:成重 敏夫

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