第61話  桜のお城 小倉城

小倉城周辺では、染井吉野(ソメイヨシノ)を始め、八重紅枝垂(ヤエベニシダレ)、枝垂桜(シダレザクラ)、舞姫(マイヒメ)など約300本の桜が楽しめます。まさに「桜のお城」といってもいいでしょう。

「小倉城ものがたり」、今回は小倉城の桜にまつわるエピソードを紹介します。

お城と桜

日本国内の城の周りには桜の木が植えられていることが多く、「桜の名所」としても知られているスポットも少なくありません。

しかし、城に桜の木が植えられたのは、城が「軍事的な防御施設」という役割を担わなくなった明治以降のこととされています。

明治6年(1873年)に出された廃城令により、全国の城の大半が取り壊され、公園として市民に開放されるようになりました。その際に桜の木が植えられたケースが多いそうです。

桜のお城・小倉城

しかし小倉城に桜の木が植えられたのはもっと前のこと。1600年代から桜の木が植えられていたとされています。

寛永9年(1632年)、第2代小倉藩藩主の細川忠利(ほそかわただとし)が熊本へ転封。

播磨明石藩主・小笠原忠真が九州の諸大名監視の命を受け小倉城に入城しました。

このころの小倉城の記録に、全国でも珍しく「桜の城」であったと残されています。

そもそも、お城に樹木が植えられることは稀でした。

というのも、城が攻められたときに樹木は視界を遮るうえに、敵にとっては隠れる場所になり邪魔でしかありません。

木が植えられる場合も、主に食糧や薬となる松の木であり、戦の際に薪として使用できる桜の木を城に植えることはできませんでした。

しかしながら、小倉城には例外的に桜の木が植えられていたそうです。

このことは、幕府から九州探題としての役割を命ぜられた小倉藩が特別な立場であったことを物語っています。

紫川十色桜

余談になりますが、小倉城と同じく小倉の桜の名所として知られる紫川沿いには、下流から上流にかけて順番に開花するよう10種類の桜が植えられています。

これを「紫川十色桜」といいます。植えられている品種は以下の通りです。

椿寒桜(ツバキカンザクラ)
修善寺寒桜(シュゼンジカンザクラ)
アメリカ
白雪(シラユキ)
鬱金(ウコン)
八重紅大島(ヤエベニオオシマ)
一葉(イチヨウ)
天の川(アマノガワ)
普賢象(フゲンゾウ)
兼六園菊桜(ケンロクエンキクザクラ)

さいごに

桜が咲くお城は全国に多数ありますが、小倉城は江戸時代から桜の木が植えられていたという珍しいお城です。
そして現在も、春になるとたくさんの桜が咲き、多くの市民が訪れます。

小倉城はまさに「桜のお城」といえるでしょう。

参考文献:北九州市ホームページ

文:成重 敏夫